今の物質の素は無から生じたと考えられている。物質の素が生じる時、同時に反物質が生じた。その反物質はどこへ行ってしまったのか。解明されていない大きな謎である。量子揺らぎにより物質と反物質は生成と消失を繰り返していると考えられている。つまり物質と反物質は無から生じ、また相互作用により光となって消失する。なのでなんらかの理由で両者は隔絶されていないと生成と消失の繰り返しが起こるだけでそこからなんの進展もない。実際の我々の世界ではその進展が起きたから存在していると考えられる。
この考えは実は重大な一つの問題を無視している。人間のスケールにおける時間軸の上でのみ解釈しようとしている点だ。一方向に流れている時間を前提として考察している。しかし時間自体が無の世界には存在しないとすれば、それを考慮して考えるべきである。無から物質と反物質が生じたときに、同時に時間が生じたと考える根拠はない。
つまり時間軸が絶対的なものではないと仮定すれば、我々の時間軸で観測した上での物質と反物質の生成という現象は、逆向きの時間軸で見れば対消滅現象になる。そしてまたこの対消滅が同時に時間の消滅も伴うものである可能性も考慮する必要がある。
物質同士は万有引力が働いて惹かれあう。と言うことは物質と反物質は反発しあうのではないか。これが周りに反物質がないことの理由の可能性の一つだ。もし物質と反物質が相互作用し得るのだとしたらそれは互いの時間軸が逆向きなのかも知れない。時間軸が逆向きの世界とは相対論的には光円錐の外の世界だ。つまり決して相互作用できない隔絶された世界。光すら到達することのできない世界である。つまり物質と反物質は生成と同時に時間の世界に投げ込まれ、相対論的効果により互いの交わり得ない世界へ引き剥がされたのかも知れない。